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この間中国を訪れた時に、最も興味を引いたのは「公益の旅」という言葉だった。広州のハンセン病快復者のサポートをしているNGOが実施しているものである。

中国のハンセン病対策も、発見・治療の段階から、快復者の社会復帰が中心になっている。しかし、高齢者では身体の機能の喪失(手や足が変形し、義足や義肢が必要になる)もあり、“ハンセン病村”と呼ばれる施設で、政府からの生活費の支給を得て、自立した生活を送るようになっている。

NGOでは義肢の提供をしたり(3~4年しかもたないそうである)、特殊な靴(指がなくなったり変形している)を調整している。

NGOに同行してそのようなムラの一つを訪れたが、まさに熱烈歓迎をうけて驚いた。ひっそりと暮らす彼等にとって、人との出会いが最大の御馳走ということなのだろう。

公益の旅とは、社会に普通に暮らす人がハンセン病村を訪問することで、ボランティア意識を芽生えさせることと同時に、人とのふれあいという最高の御馳走を提供するものになっている。

中国のハンセン病患者は、気候の関係からか四川省を中心にした南西部に集中し、北部にはほとんどいないとされている。公益の旅では、四川省の観光に訪れた人のオプショナル・ツアーとして、一日をハンセン病村訪問にあてるというシステムである。

以前日本の観光について調べたことがあるが、一昔前は企業の招待や社員旅行など団体旅行中心だったものが、家族・個人の旅行に大きく変化し、個人を対象に映画のロケ地を訪れるフィルムツアーや、モノづくりの現場を訪ねる産業ツアーなど、テーマ性を持つものが増えてきている。このバリエーションの一つとして、公益の旅というものが考えられ、会社を辞めて地域おこしにかかわりたいとしている、Tさんにも早速このアイデアの話をしてみた。

昨夜のNHKのニュースでは、震災の被災地を実際に見てもらおうという、被災地ツアーの模様が紹介されていた。まさに公益の旅である。現場を見ることで、見る目が変わるものであり、観光の本質である“見聞を広める”にもピッタリ合うと思う。旅行業界にとって新しいメニューとして定着するのではないだろうか。


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