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昨日のバカ陽気で、都心に比べて遅れていた稲毛海岸の桜も一気に元気になり、朝はチラホラ程度だったものが夕方には三分咲き程度にはなっていた。満開は土曜か日曜になりそうで天気が気がかりである。

岩波書店から2005年に発行された「桂米朝集成」を読んでいる。人間国宝にもなっている米朝が、その「落語論」を昭和20年代からいろんなところに寄稿したものや対談をまとめたものである。全4巻で1冊3600円もする本であり、例によって図書館から借りてきたものである。

米朝は私がもっとも好きな落語家で、テレビやラジオでしか聴いたことがない(一度だけ枚方市民会館で独演会があったときに行ってみたが既に売り切れで「生米朝」は見たことがない)が、落ち着いた語り口に好感が持てる。

高校の入学祝に「トランジスタラジオ」を叔父から貰い、学生時代はラジオが友達だった。昭和40年ごろに、ラジオ大阪で「題名のない番組」という米朝と小松左京が出演する番組があり、かかさず聞いていた。リスナーからの投稿を中心に構成される番組で、小松左京のツッコミを米朝が捌くという掛け合いが面白く、本職の落語以外にも活躍しており贔屓になった。

当時から彼の知識の幅広さ・深さに感銘していたが、今回この本を読んで(今まで彼の書いたものを読んだことはなかった)改めてその感を強くした。
特に、落語だけでなく伝統芸能や寄席の成り立ちについても歴史的な視点で捉え、これをもとに「米朝の落語」を展開していることに好感が持てた。そのことの意味を原点(典)にまで立ち返って理解し、その上で応用を図るという姿勢に学ぶべきことは多い。

何度も繰り返し出てくるのが、「落語は聴衆と一体となって創りだすもの」であり、聴衆の反応しだいで変わるというものである。私も講演やセミナーの仕事を始めたときは、原稿をこしらえ演台において盗み見しながら進めた時期があったが、聴衆を上手く惹きつけることができず、苦労をしていた。
あるときから、原稿を作らず大まかなストーリー構成だけをし、聴衆の反応を窺いながら進めるやり方をするようになって、やっとスムーズにできるようになってきた。
落語の世界と同じだったんだと改めて分かった。

本当の落語を味わうのにはやはり寄席に行かなくてはならない。新宿の末広には何度か出かけたことはあるが、大阪に昨年落語専門の寄席「繁盛亭」ができたそうである。
これから大阪に出かけたときは時間を作って上方落語の世界を楽しんでみたいと思う。生米朝を見ることはできないかもしれないが、新たな贔屓を発掘したいと思う(今のところ候補は桂文珍で、センスの良さは米朝に通じるものがあると思っている)。

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