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このところ株価は、大きく下げて少し戻すの繰り返しで、「稲光」のような軌跡を描きながら、あっという間に日経平均は3000円も下げてしまった。昨日はニューヨークの株価も大きく下がったので、恒例の少し戻してという動きがなく、一気に12000円台にまで突入するかもしれない。

しかも昨日の下げは、「成長戦略」の発表があった直後に生じたものであり、株価の上昇が文字通り安倍内閣の“株をあげて”、支持率の高止まりになっていただけに、参議員選挙に向けて暗雲が立ち込めてきたと感じる自民党議員も少なくないと思う。

成長戦略の目玉の一つは、薬のネット販売の解禁である。規制緩和は、お金をかけずに産業の活性化を図れることもあり、いつの時代の成長戦略にも欠かせないメニューとなっている。しかし、こいつが曲者で、規制緩和が結果的に返って成長を妨げることもある。

小泉政権の時にタクシーの規制緩和が行われたのだが、台数が増えすぎて一台当たりの売り上げが大きく落ち込み、タクシー料金の値上げになってしまった。供給が増えれば価格が下がるのが「市場の原理」だと思うのだが、真逆の事が起きてしまったわけだ。

タクシーの規制緩和は、消費者、タクシー会社、タクシードライバーには何の利益ももたらさなかった(むしろ不利益をもたらした)のだが、車を生産するメーカーと、リース会社の懐を潤すだけになってしまった。政府の委員としてこの旗振り役をしたのが、オリックスの社長だった。

今回の薬の規制緩和に、楽天の社長がいるというのも同じ構図のように見える。薬局というのは“街のインフラ”の一つだと思う。少し具合が悪い時に、医者にかかるのも億劫なので薬局に立ち寄り、薬剤師にちょっと相談して薬を選んでもらうということを何度かしたことがある。

一般医薬品に限定されるとはいえ、薬のネット販売が増えることで、一つ一つの薬局にとっては売り上げ減少につながり、淘汰される薬局が出てくると思う。規制の壁に守られて、経営努力の足りないところは退場するのが当然という理屈も一理あるのだが、街のインフラという観点からすると、薬局が淘汰されるのも問題のように思う。大型小売店の出店規制のタガが外れたことにより中心市街地がさびれ、コミュニティの崩壊が進んだのと同じような気がするのだ。

薬の販売の規制緩和で、消費者には何の利益もなく楽天だけがニコニコするようなことになりそうで、気がかりなことだ。

三本の矢の教えは、たやすく折れる一本の矢も、三本重ねると折ることができないことを三人の息子に体験させ、兄弟力を合わせることの大事さを教えた毛利元就の故事である。成長戦略という最終目標に対して、それを実現するための金融政策や、財政政策があるのだと思う。しかし、安倍政権の三本の矢は成長戦略(メニューを並べただけで戦略とは呼べない代物だと思うのだが)の前に、金融政策や財政政策が登場するなど、とても三本の矢が束になっているとは思えない。

一つ一つバラバラで、簡単に折れそうな気がしてならないのだが…
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