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週末に行われるダービーを前に注目の判決が出された。28億円の資金を投じ、30億円の配当を得た人物が脱税に問われた裁判だが、ポイントは“必要経費”の認定にあった。国税庁の判断は、的中馬券に要した馬券の購入費だけを経費として認定し、外れ馬券の経費は認められずに28億円の利益があったとみなし、6億円近い脱税があったということになっていた。

実際に得た儲けは1億5千万円にもかかわらず、6億円もの税を支払えという無茶苦茶な税務当局の判断に対して、裁判所は経費を認め1億5千万円に対する税金を支払えという判決になった。

一見すると、“まともな判決”のように見えるが、判決文では「“営利”を目的とし継続的に馬券を購入した場合は、外れ馬券も必要経費とみなす」という但し書きが付いている。この“営利”を目的としてということの解釈が問題になりそうである。

この人物は、競馬ソフトを改良して、大量の点数の馬券を買うことにより、いわば薄利多売の手法で1億5千万円の儲けを獲得している。好きな馬や、贔屓の騎手に1票を投じるなどのロマン(?)は一切なく、機械的に馬券を購入する手法をとっていた。

普通の競馬フアンはもちろん営利を求めているのだが、機械的な買い方ではなく、心情も多分に加味したものになっているため、裁判所の判断では営利を目的とした行動にはならない可能性がある。人生に一度しかない幸運に恵まれたとしたら、外れ馬券は考慮せずに納税義務が発生する恐れが十分ありそうだ(税金を支払うから人生一度の幸運に巡り合いたいものだが)。

昨日、株価が暴落した。その要因の一つに、HFTというコンピュータを駆使した取引手法があるとされている。過去の取引データをもとに、値動きをにらみながら1秒間に数千回の取引を繰り返すらしい。昨日取り上げた東電の売買高が多いのもHFTの“機械的な判断”でお眼鏡にかなった結果なのかもしれない。

東証の売買高に占める比率は40%を超えているらしいのだが、競馬で脱税に問われた人物の、機械的に馬券を購入しまくるという手法とHFTは似ているような気がする。夢もロマンもないのが勝者になるというのは、住みにくい世の中だ。

そんな所に、癒される話が飛び込んできた。80歳でのエベレスト登頂である。筑波山を登るのに悪戦苦闘した身にとって、信じられない快挙であり、個人的には国民栄誉賞モノだと思っている。

この話のもっと凄いのは、三浦雄一郎の75歳の最高齢エベレスト登頂記録を76歳に更新したネパール人の男性が、81歳の登頂記録を目指して準備していると報道されていることである。チャレンジスピリッツの塊のような話であり、機械的な株式や馬券の購入とは対照的な気がする。

下山も登頂と同じように困難だと思う。三浦さんが無事麓に到着したら祝杯をあげようと思う(「また飲む口実を作って」という外野からの声が聞こえそうだが)。

今週のダービーにももちろん投票する。贔屓の蛯名騎手の「ヒラボクディープ」(養豚業者の平田牧場が馬主というのがなぜかおかしいのだが)の単勝と、蛯名と同期のキズナとの馬連という心情馬券だ。


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