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最近気になることの一つが、介護保険制度の瓦解である。少子高齢化の進展により影響を受けるのは年金制度だけでなく、社会福祉制度全般に影響をもたらすのである。

文京区立の特別養護老人ホーム「くすのきの郷」が、東京都から事業者指定の取り消しを受けた。天皇陛下も視察に訪れたことのあるCSの高さに定評のある施設だが、ボランティアとして受け入れたフィリピン人の女性を職員と偽って夜勤に組み入れ介護保険を不正に受け取ったというのが理由である。

その背景には、介護報酬の少なさによる慢性的な人出不足がある。介護報酬は公定価格であり、しかも年々その金額は減少傾向にある。介護の仕事に従事して食べて行くのは容易なことではなく、その結果なり手が少なくなっているのが人出不足の要因である。

夜勤の人数を一人増員するのは、一人増やすだけでは解決しない。3日で1日担当という制度になるために、3人の増員が必要なのである。職員へのなり手が少ない中での増員は、事業者にとっては極めて厳しいものとなっている。このままでは、人出不足のために施設を閉鎖せざるを得ない事業者がドンドン出てくるのではないだろうか。

介護保険制度が導入されたのは2000年からだが、度々見直しが行われ、介護認定の基準が厳しくなるとともに介護報酬の切り下げが行われてきた。増大する介護費用を介護保険料で賄うためにどうしてもこのような姿にならざるを得ないのだろう。

少子高齢化のもとに、国はアメリカ型の「小さな政府」を目指している。大きな政府の元凶である社会福祉を切り詰めてゆくというのが基本政策なのであろう。年金や健康保険なども同じ範疇の問題である。

「国家のために国民がある」のか、「国民のために国家がある」のかの違いが福祉政策を考える時のベースにあると思う。少子高齢化と人口減少社会が避けて通れない今、どちらを選択すべきなのだろうか。微妙な問題であり、もっと活発な議論があってもよいと思うのだが。
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