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観光産業は、「心の産業」であるということについて述べたい。これは、今月のマーケティング夜咄で、観光をテーマに話をし、観光産業の特徴を整理していた時に、K氏が思わず発した言葉である。したがって、「観光産業は心の産業」という言葉の著作権はK氏にある。

ネットワーク型産業である観光産業は、ネットワークを構成する誰かだけが潤えばよいというものではなく、ネットワーク全体がよくならなければならないのである。

これと対極にあるのが、温泉街にある大型旅館・ホテルである。慰安旅行などの団体を受け入れることで成長したこのような施設では、飲食店やBar、土産物店などすべてを施設内に設け、客を外に出さない戦略(言い換えると自分だけが儲ける)を徹底した。

その結果は、温泉街を浴衣掛けで散策する人の姿がめっきり減り、街の賑わいが失われてしまい、寂れた姿をさらす温泉地が少なくない。

観光産業は、自分だけがよければいいというのではなく、ネットワーク全体がよくなるということを意識しなければならないのである。アメリカ型のビジネスモデルで考えてはならず、金融危機以降のビジネスモデルにふさわしい産業ではあるまいか。

観光産業は、サービス業であり、「おもてなしの心」という言葉がもてはやされる。「観光地の○○」と言われて評判が悪いのは、観光客を「一見客」とみなして、ボッタくるからであり、これを諌めておもてなしの心が強調されるのである。

私は、観光客の意識にも変化があると思う。観光は癒しを求めるだけでなく、珍しいものを見るなど知識欲をも満たすものである。観光地を楽しむためには、知識の武装があるといっそう深まるものである。

一座建立という言葉がある。これについては2007年3月7日付けのこのブログに詳しく触れている。観光は人との交流を通じて一座建立の精神を醸成するというのが、日本のような超成熟化社会にふさわしいと思うのである。

さらに、地域の伝統や歴史、文化を認識し、多くの観光客がその魅力を頼って訪れる(=有名になる)ことで、「郷土愛」が育まれるのである。

以上の様なことが重なって、「心の産業」という言葉が生まれたのである。この言葉がキーワードだと私は思う。
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