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観光の市場規模がわかりにくいのは、「観光業」というものがないためである。市場規模を捉える場合、供給側から捉えるか、需要サイドを押さえるかの2通りある。一般的には、供給側からカウントする方がやりやすく、政府統計はすべて供給側からのものである。

ところが、観光業というものが存在しないため、観光産業の市場規模を把握するのに困難を極めるのである。

観光産業は、鉄道やバスなどの輸送機関、宿泊施設、飲食店、観光施設、物販店など多種多様な業種が参画して、成立している。ところが、輸送機関や宿泊施設・飲食店などは、観光以外の目的でも利用されており、観光だけを切り出すことが不可能なために、供給サイドからは追いきれないのである。

需要から市場規模を推定するには、消費者に対する調査でカバーすることになる。ところが、全国の市場規模を出すには数千のサンプル調査で何とかなるのだが、観光産業は地場産業であるため、地域別の市場規模が必要になる。地域を都道府県単位で取るとしても、そのためには膨大なサンプルが必要であり、容易ではないのである。

それもこれも、観光業というものがないためである。

見方を変えると、観光産業は輸送機関や宿泊施設、飲食店など様々な業種のネットワークによって成立している点に特徴があるといえる。

自動車産業や住宅産業も、多様な業種(主として部品だが)のネットワークによって成り立っているのだが、頂点に自動車メーカーやハウスメーカーなどの最終組立てメーカーが存在する点で、観光産業と異なるのである。旅行代理店は、一部しかカバーできていないのである。

ネットワークという言葉の、私の定義は「個々の独立した組織の有機的な結合」である。有機的な結合とは1+1=2になるのではなく、ネットワーク効果で化学反応を起こすことにより1+1が3にも4にもなるということである。

有機的結合を起こすためには、コーディネーターが必要だが、これは行政の役割ではないかと私は思う。この場合の行政は国ではなく、地方自治体になるのだが、市町村では範囲が狭く、県レベルになると思う。

理想を言うなら、地域振興の役割が大きい道州制のレベルが最も適していると思う。したがって、道州制の地域割りは大きな問題になり、中国地方と四国を一緒にするような案は、中央集権的考えの延長であり、受け入れられないものである。
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