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オリンピックのマラソンは難しい競技であることを、昨日のレースで再認識させられた。これまでのオリンピックでは真夏の開催ということで消耗戦になり、どの国の選手にもチャンスがあったが、前回の北京では暑さにもかかわらず、ケニアの選手が条件のそろった賞金大会のようなスピードを見せつけて優勝し、オリンピックのマラソンの常識を覆させられた。

ましてやロンドンは気候にも恵まれ、これまでの真夏の消耗戦にはならず、世界ランキング10位を独占するケニアから、厳選されて出場した3人の中からチャンピオンが出るものだと思っていた。しかし、結果はやっぱり消耗戦だったようで、優勝候補筆頭のケニアのキプサングは終盤に失速し、ラスト5キロ1分30秒もの差をつけられてしまった。

1分30秒というのは距離にすると500mになり、あっという間に視界から消えてしまった事になる(実際、テレビの画面からすぐに見えなくなってしまった)。私の期待していた藤原も、30キロあたりでは中本と同じようの位置にいたが、ゴールした時には中本とは8分の差があった。

こちらは10キロ走る間に、2キロもの差がついたことになる。マラソンのダメージの大きさがうかがい知れる失速だ。

気象条件に恵まれながら、優勝タイムが平凡で、しかも消耗戦となった原因は2つある。一つはこのコースが周回コースで、カーブが多いことがあげられる。緩やかなカーブなら良いのだが、角を直角に曲がるような箇所が多く、そのたびにスピードの上げ下げがあり、インターバルトレーニングをしながらマラソンを走ったようなものである(インターバルトレーニングをしているとじわじわダメージがくるものである)。

もう一つは、ペースメーカーの付かないマラソンであることだ。ケニア選手が活躍する賞金大会では、必ずペースメーカーが付き、30キロあたりまで一定の速いペースでレースを引っ張り、ラスト10キロのスピードレースで好記録を出すというのがお決まりになっている。

ところが、オリンピックではペースメーカーが付かず、最初からガチンコ勝負になるのである。昨日のレースもキプサングは10キロから15キロで、それまでのペースを1分上回るスピードで飛びだした。優勝候補の早い段階でのペースアップを追いかけたため、大半の選手は失速した(終盤ではなく、中盤での失速も多かったように思う)。

2つの消耗戦となった理由に共通するのは、マラソンというのはペースを守るということがいかに大事であるかを物語っている。今月の日経の「私の履歴書」は、メキシコの銀メダリスト君原選手が登場している。

その中に、少しでも身軽になるため、時計をつけないのはもちろんのこと、普段はかけている眼鏡も外してレースに臨むというくだりがあった。壊れやすいガラス細工を扱うような細心の注意を払うのがマラソンという競技なのだろう。

マラソンというのは面白いスポーツだ。今更自分で走ろうとは思わないのだが…
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