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一昔前に、フランク・ショーターというマラソンの名選手が居た。1972年のミュンヘンオリンピックの金メダルをはじめ、次のモントリオールで銀メダル(これは大番狂わせだった)を獲得し、特に日本では福岡国際の4連覇やびわ湖毎日マラソンでも優勝しており、不敗神話が生まれていた存在だった。

特にそのインパクトが大きかったのは、1973年のびわ湖毎日マラソンだった。前年のミュンヘンで優勝したこともあり、この大会でも大本命だった。予想通りの後続を離しての独走だったが、異変が起こった。ショーターに腹痛が起こり、沿道の観衆が手にしている主催新聞社の小旗を取り上げ、コースを離れたところで用を足したのだ(あの小旗にはこういう用途があったとは)。

素早く用を済ませてコースに戻るとそのまま走り続けて優勝してしまった。「早飯早糞も芸の内」を文字通り実践したわけだが、もっと凄いのはいったん止まってからもう一度走り出したことである。リズムが崩れると走りにくいものなのに、いとも簡単にやってのけたわけで、日本で不敗神話が生まれた理由であり、モントリオールの銀メダルが番狂わせに思われたのだ。

このショーターの逸話を想い出させる事が昨日の競馬であった。昨年の三冠馬で年度代表馬になったオルフェーブルが、昨日の阪神競馬場に出走してきたので、レースぶりを注目していた。

スタートからオルフェーブルは力んだ走りで、騎手が手綱を懸命に引っ張って抑え込もうとするのだが、口を割って言うことを聞かず、先頭に立って走ってしまっていた。それがとうとう3コーナーで爆発してしまい、コーナーを曲がれず外ラチに向かって走ってしまったのだ。

思わず故障したのかと見ていると、後続の馬が通り過ぎると猛然と追いかけ始めたのだ。丸いコーナーを直角に回ってしまった格好で、距離損は大きく、しかも一度止まりかけてからの走りで、びわ湖のショーターを想い出させたのだ。

ショーターのように優勝とはならず2位になってしまったのだが、3000mのレースで3200mを1頭だけ走っているようなレースぶりで、とてつもない化け物のような馬だということは再認識させられた。化け物が2位に敗れたため、昨日のWIN5は1億9千8百万円という結果になってしまった。
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