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この数年の仕事の中で、がん治療にまつわるテーマがいくつかある。抗がん剤の研究開発や緩和ケアなどについてのプロジェクトで、今年も緩和ケアについてのものがあり、がん治療についての情報には少し関心がある。

とはいっても、自分自身ががんに罹ることを懸念してのものではなく、純粋に仕事上の関心事である。私の母は76歳の時に肺がんになり、発見されてから半年足らずに逝ってしまったし、弟は28歳の時、父の弟は40歳代で、母の弟は30歳代と身の回りで若くしてがんに倒れた人に囲まれており、筋金入りの“がん血統”なのだが、60歳を越えrた今となってはあまり気にしなくなったからだ。

日本人の死因でがんで亡くなる人が最も多いのだが、寿命が延びたことがその理由だと思っている。がんに罹る前にその他の病気で死亡していたものが、それをくぐり抜けた人たちが最後にがんに見舞われるために死因のトップに躍り出たものだと思う。

がん研究は21世紀に入る頃から急速に進歩し、色んな謎が次第に解明されるようになった。90年代に行われたゲノム研究が大きく寄与したのだろう。その一つが「がん幹細胞」についてのものである。それまでも、仮説としてがん幹細胞の働き方ががんの引き金になると思われていたが、その存在がかなり判明してきたようだ。

私の理解では、人間の身体には誰にでも「がん幹細胞」が存在している。普段はおとなしく休眠しているのだが、ある時突然に眼を覚ましがん細胞を増殖させるという厄介な存在であるようだ(タバコや酒がその犯人の一つだと思われているようだが)。誰もががんになる可能性があるわけで、それが早いか遅いかの違いだけだと思う。

子どもが小さい間は、家族への責任ということを強く考えたが、全て成人した今となっては、誰もががん幹細胞を持っているわけだから、気にしても仕方がないという考えがだんだん強くなってきたために、とうとう最近ではがん検診を受けることはなくなってしまった。

こんな考えに意を強くしたのは、「がん放置療法のすすめ」(文春新書 近藤誠著)を読んだからである。手術や抗がん剤などによる“がん治療”のデメリットが強調された内容になっており、どうせいつかは罹るがんなのだから、若いうちならともかく歳をとってからは無理な治療をしないで、QOLを大事にするという考え方共鳴を覚えてしまった。批判的に物事を見、自分に都合のよい所だけに共感する態度はいさめなければならないのだが…

延命治療の是非が問われているが、歳をとってからのがん治療も無駄な延命治療の一つではないだろうか。子どもの日にふと考えてしまった。

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