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眼科医の診断は良いことが一つと、悪いことが一つであった。良い方は、恐れていた網膜剥離でなかったことである。白内障の手術をした時に、医師から「強度の近視の場合、白内障の手術後に網膜剥離を発症することが多いので注意する必要がある」と言われていた。

眼底検査の結果、「網膜剥離はありませんね。後部硝子体剥離による“ひぶんしょう”です。」とのことであった。聞き慣れない言葉なので、どんな字を書くのか尋ねたところ、「蚊がブンブン飛びまわるように見えることです。」という言葉であった。

咄嗟には理解できず、帰宅して調べてみると、“飛蚊症”と書くようである。後部硝子体剥離は、加齢や強度近視によって発生するものであり、重篤なものではないという。しかし、医師の託宣は「治りません」のつれない一言であった。

このところ、毎年10月ごろに蚊に悩まされることが多い。我が家に居ついている蚊は、真夏には暑さのせいか大人しくしているのだが、気候がよくなると動き出すのである。それも晩秋には治まるので、一ヶ月ほどの辛抱で済んでいたのだが、治りませんの一言で、眼の中を飛び回る蚊には一年中悩まされることになりそうだ。これが悪いことの一つである。

蚊という文字は、音読みすると“ぶん”と読むことを初めて知った。確かに、つくりを見ると「文」という文字であり、これが読みにつながっているのだろうが、この文字をあてたのは、「ブンブン飛び回る」ことから来たりして…

死ぬまで蚊に悩まされるとは、鬱陶しいことだ。
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