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「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がぴったりあてはまり、ようやく秋の空気と入れ替わったようで、昨夜は今シーズンの初鍋となった。きっかけは、昨日の相撲中継で幕下以下の優勝力士インタビューで、三段目の優勝力士が部屋のちゃんこ番をやっており「今晩はさっぱりしたトリのちゃんこの準備をします。」という言葉を聴いたからだ。

三段目とはいえ、優勝した夜ぐらいはお祝いをするのかと思ったが、関取とは違いちゃんこ番をするのが当たり前なのだろう。子どもの頃母親から、「お前は“話食い”やな」ということをよく言われたが、昨夜も三つ子の魂の血が騒ぎ、鶏の鍋になった次第だ。

広島・大阪への出張では新幹線のトラブルもあり、美味しいものにありつけることはできなかったが、逆にじっくり読書することはできた。今回の出張の友は、「昭和史」(中村隆英著 東洋経済新報社)である。

93年に出版されたもので、これがこのほど文庫化されたものである。虎ノ門の書店で大きなポスターが目に付き、買い求めておいたものである。宣伝に釣られて買ってしまうというのは、ここでも“話食い”の本領発揮というところか。

450ページほどの上下2巻になっているが、ようやく上巻が終わりかけたところである。新幹線で広島までの往復8時間に、新富士での停車時間1時間半を加えると10時間ほどの読書時間があったが、居眠りや喫煙ルームの利用などで2時間ほど抜けたが8時間ほどは読書に集中していたと思う。

それでも、上巻の9割ほど読み終えただけである。文庫本の小説なら1時間に100ページは読めるのだが、その半分ほどにペースダウンしてしまっている。著者は経済史の専門家のようであり、政治だけでなく経済の観点からも時代を分析しており、中身が濃いためにペースが上がらなかったのであろう。

上巻は大正の末期から、終戦まで。下巻は戦後復興から昭和の終焉までの構成になっている。全部読み終えてから感想を書くべきなのだが、前半だけでも書きたいことが一杯できてしまった。

これまで昭和の歴史というものにあまり興味を持つことはなく、特に戦前の戦争に至るまでの歴史を描いたものをきっちり読んだことはなかった。忌まわしい歴史を振り返りたくはなかったのかもしれない。

それだけに、新鮮な目で読むことができて新しい発見が一杯出てきた。政治の世界では、二大政党制で政権交代が頻繁に行われたが、足の引っ張り合いが繰り返させられていたということだ。「閣内不一致」を叫んで政権を揺さぶり、変わっては見たものの、攻守所を変えただけという政治が延々と続くのである。

後で調べようと思うのだが、大正末期から開戦までに何人首相が変わったのだろうか。1年任期の首相や、足の引っ張り合いなどは今の状況と全く同じだ。なぜ日本が敗戦に至ったのか、政治家の大好きな“勉強会”にこの本をテキストにすることをお勧めしたいものだ。

日本の満州から始まって、中国への進出の歴史を淡々と触れているのだが、それだけに中国人が日本に対してどのような思いを持つのかがよくわかる気がした。「毅然とした態度」という言葉を使用禁止にしなければならないという思いを持ってしまった。

巻末の資料に、日本の太平洋戦争による人命被害が掲載されている。240万人余りの人が亡くなり、内訳は軍人190万人、民間40万人である。ヨーロッパに目を転じると、ソ連が2000万人を超え、ドイツ680万人、ポーランド610万人と日本をはるかに超える犠牲者が出ている。

ヨーロッパの戦いの凄さがよくわかる数字で、ユーロの持つ意味がよくわかったのだが、中国の被害はどこの資料にも出てこない。数えきれないということだろうか。

昭和の歴史から目をそらさず、我々の先祖は何をしたのか冷静に見つめ直す必要があると思う。経済学者が淡々と歴史の事実を拾い集めている。良書だと思う。



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