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黒川温泉の旅館新明館の主人で、国土交通省から「観光カリスマ」に認定された後藤哲也氏と旅行作家で札幌国際大学観光学部教授の松田忠徳氏との対論集「黒川温泉 経営学講座」(光文社新書)を読んだ。

黒川温泉は熊本県の東北部、大分県との県境南小国町に位置する古くからの温泉街である。公共交通機関の便が悪くひっそりとした湯治の宿であったが、昭和39年の「やまなみハイウエイ」の開通により、脚光を浴びるようになった。

高校の修学旅行が南九州一週の旅で、瀬戸内海を船で渡り、大分から熊本へ移動する時に「やまなみハイウエイ」を通り、雄大な景色と快適な道路(当時はまだ名神高速道路もなかった)に感動したことを覚えている。

しかし、栄えたのは開通当時の一時だけで、大型温泉地に押されて低迷が続いていたが、90年代の後半から評判が上がり、2000年代になるとマスコミにも度々取り上げられる人気温泉になった。
その原動力になったのが後藤氏で、その経営哲学が語られているのが本書である。聞き手の松田氏がやや喋りすぎになっているのが気になるが、後藤氏の話には得るところが多い。

一番感銘を受けたのは、自分の旅館だけが繁盛するのではなく、街全体の繁栄を考えていることである。
黒川温泉の名物になっているのが「入湯手形」である。「入湯手形」を買い求めると、宿泊している旅館の他に3軒まで自由に風呂を利用できるものである。敷地の制約などで露天風呂を作れない旅館があり、これを救うために作った制度が、風呂巡りという魅力になって評判を呼んだのである。

後藤氏は経営する旅館の売店を最小限の規模にとどめている。その心は、「宿泊客に街を散策してもらい、街としての賑わいを創る」という点にある。
宿泊、飲食、物販の3本柱で売上拡大を目指す宿泊施設が多い中で、あえて飲食や物販の拡大を求めず、街との共存共栄を図ろうとしているのである。

桜の開花予想が気象庁より昨日発表された。例年より、2週間程度早く桜が拝めそうである。以前ラジオの番組で、「一本桜」と「並木桜」のどちらが良いかというものがあった。私は、「薄墨桜」のような一本桜も風情があって好きだが、土手に連なる並木桜は華やいだ雰囲気があって更に好きである。

黒川温泉も街並みみの統一や、旅館組合の活動など、「並木桜」を育てようという姿勢が感じられ、「町興し」の原点を見るような気がする。

後藤氏の話についての感想はまだまだあり、後日述べることにする。
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日本経済新聞大阪本社編集委員の脇本祐一氏が書いた「豪商たちの時代 徳川三百年は「あきんど」が創った」(日本経済新聞)を読んだ。商人の視点で書かれた江戸時代史ともいうべき内容で、改めて江戸時代とは度いう時代かということがわかったような気がする。

江戸時代は「鎖国」の時代であるという認識があったが、「鎖国」という言葉は当初は使っておらず、19世紀になって初めて志築忠雄の「鎖国論」という書物で登場し、鎖国が祖法という意識が出てくる。確かに、ポルトガルやスペインなどのカソリック国との交易は禁止されたが、オランダや中国との交易は長崎を窓口に開かれ、北方民族との窓口も蝦夷で行われていた。

一方、門戸が制限されていた中で、自給自足体制が確立し、綿花の栽培により衣類や油をまかない、養蚕による絹織物、楮・三椏による紙の製造、干鰯や〆鰊による肥料としての活用など農業をベースに今日の化学や繊維などの工業が確立していた時代である。自前の精神で知恵を絞り新しい時代を切り開いていった先人のパイオニアスピリッツには頭が下がる。

商人の視点で書かれているから、どうしても中心は商都大阪になり、江戸時代は「浪花時代」かと錯覚しそうになる。江戸時代は先にあげた自給自足体制が確立した時代であり、商品経済が一挙に発展した時代でもある。一方商品の流通を支える貨幣は、それまで世界有数の鉱山国として豊富に産出された金や銀の産出量が激減し、通貨不足が経済発展の阻害要因となり、貨幣改鋳によるインフレ(元禄期)、貨幣の流通量不足によるデフレ(享保期)などが起こり、米価下落に伴い、幕府や大名などの武家社会は18世紀以降絶えず財政改革に取り組まざるを得なかった。

江戸時代は、幕府の行った享保の改革などの3大改革を筆頭に、田沼の治世など頻繁に体制を維持しようとする改革が幕府や大名家で行われていた時代である。構造改革の歴史として見て取ることができ、今日にも通じるものがあると思う。そんな中で、幕末の備中松山藩の山田方谷の改革が特筆されるものである。特産品の備中鍬を強化し、藩の専売品として外貨を獲得し、藩内の流通には外貨の裏づけのある藩札を発行して活性化を図り、10年間で80万両の借財を返還し、同額の蓄財を果たしたそうである。今年1年の研究テーマを「再生」ということにしている。山田方谷の改革について少し調べてみようと思う。ちなみにJR伯備線に「方谷駅」という名の駅がある、これは日本で最初に人名からとられた駅名だそうで、山田方谷がいかに信望があったかを物語っているといえよう。

NHKの記者だった手島龍一と外務省のラスプーチンといわれた佐藤優の対論「インテリジェンス 武器なき戦争」(幻冬舎)を読んだ。CSの講演の中で、情報提供の重要性を訴えるときに、インフォメーション(お知らせ)ではなく、インテリジェンスの観点で情報提供を考えるべきだとしているので、インテリジェンスと言う言葉に興味があった。

辞書を引くと、インテリジェンスの意味として、知識や知恵があげられている。情報提供を企業側からのお知らせではなく、相手(顧客)の知りたいこと(知識や知恵に結びつくこと)を知らせる観点で考えるのがCS向上の決め手になるとしているのである。

この本でいうインテリジェンスの意味は少し違い、昔の日本陸軍で使っていた「秘密戦」と言う概念に近いものだとしている。「秘密戦」は、諜報、防諜、宣伝、謀略の4つの要素に分けられるそうであるが、諜報(情報収集・分析)をベースに残りの3つがアクションプランとしてあるのだと思われる。

この本によると、諜報の部分のインテリジェンスは新聞記事などで公開されている情報を整理することにより、98%はわかるものとしている。公開情報をもとに推論を立てていくことにより、実像が浮かび上がってくるのである。これは競合企業の戦略を分析する際にも良く用いる手法で、記事や有価証券報告書の記述、関係者へのインタビューをまじえて裏を取りながら分析を進めていく。ビジネスの世界にも通用する考え方である。ビジネスでインテリジェンスをどう活用していくべきかもう少し整理してみたいと思う。



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