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辞めると言ったら不信任案は否決されたが、結局引きずりおろされるわけだから、不信任案が可決されたのと同じことだ。後をどうするかは何も決めずに辞任表明に追い込むというのは、大人の世界での“いじめ”にしか見えない。

昨日読んだ週刊文春の中で、「宰相不幸社会」という言葉があったが、まさにその通りの光景がこのところ展開されてきたわけだ。

話は変わるが、先日ある「ろう学校」を訪問する機会があった。日本のろう教育の思想は、ハンディを乗り越えて“普通”の人々の世界に順応する能力を身につけることに重点が置かれていた。

その結果口話法というろう者に対しては非常に苦痛を伴う事が教育に取り込まれていた。聞こえないというのに話せという無理難題を押し付けていたのである。

そこで手話を使った教育が重要視され出し、手話を使った授業が行われるところが出始め、先日訪れた学校もその一つだった。

ところで、手話には2種類ある。一つは日本語に合わせて作られた「日本語対応手話」と、もう一つはろう者の中で身ぶり手ぶりの中で生まれた「日本手話」と呼ばれるものである。日本手話は、日本語とは全く関係なく構成されているため、外国語といってよいだろう。

ちなみに、官房長官の横で使っているのは日本語対応手話であり、教育テレビの手話ニュースは日本手話である。現在、日本では日本語対応手話がメインであり、これは一般世界に順応するという思想からきているのだろう。

しかし、ろう者の子どもにとっては厳しいものがある。幼児期に日本語を理解するのが大変なことであり、一番大事な考えるということが上手くいかないのである。健常者にとっては、日本語対応手話の方が理解しやすいのは言うまでもない。

ろう者特に子どもにとっては、自然発生的に生まれた日本手話の方がはるかに取り組みやすいのである。訪問したろう学校は、日本手話で教育を行う日本でただ一つの学校である。

休み時間はもちろん、授業中もとにかく生徒たちが活発であることに驚かされた。とにかく自分の意見を積極的に“発言”するのである。扱いやすい武器を持つ事が子どもにとってどれだけ大事であるかを痛感させられたのである。

当然のように子ども同士だからいさかいが始まる。その現場で校長が話したのは「喧嘩があっても仲裁はしません。話し合いで解決できるように仕向けるようにしています。子供同士の話し合いでは、“多数決”も採らないようにしています。」ということだった。

日本語対応手話というのは、健常者というメジャーに合わせたものであるのに対して、日本手話というのは健常者から遠く離れたマイナーなものである。マイナーなものを採用した教育に取り組んでいるのだから、“多数決”が馴染まないのは当然なのだろう。

話は長くなったが、昨日の不信任案を巡るドタバタを見ながら校長の話を想い出してしまった。

数の論理だけで物事を進め妥協点を見いだせずにいる国会議員たちに、ろう教育を施す必要があるかもしれない。

ちなみに皇族の方々が使われている手話は日本手話であるそうだ。
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