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10年一昔という言葉がある。私の大好きな言葉で、10年スパンで物事を見ると、目先の事ばかり追いかけて見落としがちになるものが、くっきり浮かび上がることがよくあるからだ。今朝の日経の記事で、そのことを再認識させられるものがあった。

今年の3月期決算の見通しが、先週相次いで発表された。大きく取り上げられたのが、パナソニックの7800億円の大赤字、シャープやソニーも2000億円を超える赤字、NECも1000億円の赤字となり、電機メーカーの大苦戦が大きく報じられ、“お家芸”の転落というショッキングなニュースだった。

しかし、今朝の日経の記事を見ると、そう悲観的なものではないようだ。記事には、3月期の企業業績見通しの上位と下位のランキングが出ている。トップはドコモの4740億円。以下、NTT、三菱商事、三井物産、ソフトバンクと続いている。6位以下は、日産、伊藤忠、住商、KDDI、ホンダであり、通信、商社、自動車が稼ぎ頭ということで、電機メーカーの姿はない。

商社が上位にランクされたのは、資源高と円高の恩恵に恵まれたものだろうが、円高に加えて東北の震災やタイの洪水の影響もあるはずなのに、自動車メーカーも2社ランキングされている。環境が悪い中でも、かじ取り一つで何とかなることの証明ではないだろうか。

ここからが、10年一昔の登場になる。10年前の02年は、ITバブルが崩壊した時期になり、今と同じように電機メーカーの業績に大きなダメージが起こった年だ。最も巨額の赤字を出したのは日立で、4800億円の赤字を計上している。

一方自動車メーカーは好調で、トヨタ、日産、ホンダがベスト3で、以下武田薬品、任天堂の5社が1000億円を超える利益を上げている。実は02年に1000億円を超える利益を上げたのはこの5社だけである。12年3月期に1000億円を超える利益を上げるとみられているのは、21社とされており、02年に大きなダメージを受けて事業構造の大転換を図った日立も、今期は2000億円の黒字見通しとなる。

一方、1000億円以上の赤字企業は、02年は11社を数えたが、今期は6社にとどまっている。パナソニックやシャープ、ソニーという“優良ブランド”が大赤字になったために印象が強くなっただけで、大幅な円高、震災、洪水というマイナス要因があるなかで、企業の業績は堅調であるということが言えると思う。

声の大きさ、特に“悲鳴”の大きさについ目を奪われてしまうのだが、冷静に長いスパンでモノを見ることが大事だということを改めて教えられたデータだった。


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