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行徳の駅近くに、昔ながらの八百屋と肉屋、魚屋が3軒並んでいる所がある。肉屋はメンチカツが売り物みたいで、揚げ立てを求めて行列ができている時がある。私は、揚げ物を受け付けないので並んだことはないが、コンディションの良い折に一度チャレンジをしてみたい。

昔の市場のような雰囲気が好きでちょくちょく覗いてみるのだが、中でも私のお気に入りは、「えびの桑田」という魚屋である。店構えを見ると居酒屋や小料理屋相手の業務用がメインの店であるが、小売りもやっている。先日人形町で懇意の板前と飲みながら話をしていた時に、その店の話題になったが、驚いたのはその店も桑田から仕入れているということだった。人形町の店がわざわざ行徳から仕入れているのだから、その店のステータスがわかり、私の鼻のよさにも満足したものだった。

私は、出張した時に余裕があると、スーパーを覗くことにしている。チェックしているのは調味料売り場と鮮魚コーナーである。その品ぞろえを見ると、地域の生活水準や食文化がわかるからだ。

静岡でイルカが売られていたり、沖縄ではスズキ(ナイルパーチ)として切身があったのには驚いた。興味深かったのは奄美のスーパーで、一杯4千円の「島ダコ」や一本6千円もする魚(名前を忘れた)が普通に並んでいたことだ。私のよく利用するスーパーで1千円を超える魚が並んでいるのにお目にかかったことはなく、あったとしても特別なポジションに並べられるが、高級魚が普通に並んでいるのには驚きだった。

想像したのは、奄美の人は宴会好きで、島ダコは欠かせないということだ。それだけ地域コミュニティの絆が深いと思ったりしたものだ。

ところで「えびの桑田」なのだが、私のお気に入りはフグとアンコウである。トラフグの鍋は2100円(3~4人前)、テッサが2200円(博多のフグ屋だと2人前、東京のフグ屋だと4人前のボリューム)である。店員に聞くと下関モノは高いので長崎産ということだが、味・ボリュームとも満足いくものである。

アンコウの方は1260円(3人前)であるが、入っている肝の大きさはスーパーで980円で並んでいるそれの3倍の大きさである。アンコウ鍋をする時は最初に肝を乾煎りし、白味噌5.5:赤味噌4.5で味付けをするのだが、肝が大きいとコクが違ってくるのである。

アンコウは月に2~3回利用するが、フグの方は一冬に2~3回に抑えている。正月にフグを食べようと昨年の暮れに訪れたが、クリスマスを過ぎると予約の分しか売らないということだった。

そこで来年の正月用に予約をしに行ったが、正月用は普段店に並んでいるものの3倍の大きさになり、1万2千円ということだった。とても食べ切れない量だと言ったところ、「いつも来てもらっているんだから、特別に普段のサイズを作ってあげるよ」ということになった。

月に2~3回しか利用しないのに、常連客のように思われたのは“ヒゲの効用”ということなのだろうか。「顧客の要望に応えること」がCSの原点であることを改めて感じさせられた出来事だった。
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