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昨日に続いて、選挙の話をもう少し。安倍首相の人気のなさの要因の一つが、人間としての魅力の乏しさにある。相手に攻撃されると、すぐに声を荒げて反論するというのは大人の対応ではない。どっしりとした対応に信頼感が置かれるものだ。

言葉を大切にしないというのも欠点だ。「美しい国日本」「戦後レジームからの脱却」などというキャッチフレーズは一見すると分かりやすそうだが、よくよく考えてみると何を言いたいのかさっぱり分からない。一言で“つかみ”を得るというのは重要だが、つかみ損ねた感じだ。

レジームというのはフランス語で「アンシャン・レジーム」というのが有名な言葉だ。旧態依然と翻訳されている。この言葉は2度有名な使われ方をしている。1度目は、デカルトが17世紀中ごろにフランスの封建体制を批判する言葉として用いられ、2度目は18世紀末のフランス革命でルイ16世やマリー・アントワネットの行動に対して用いられている。

長く続くことによって、澱がたまったり、カビが生えるということなのだろう。戦後の枠組みでよくないことは何で、なぜ良くないのか(旧いからというだけでは理由にならない)を示す必要があると思う。

1992年に田村 明という人が書いた「江戸東京まちづくり物語」(時事通信社)を読んでいると、山の手と下町の対比で面白いことが書かれている。

山の手は武家屋敷が集中しているが、武家同士の交流はご法度であり、必然的に屋敷内だけでの交流(ムラ社会の形成)となるのに対し、下町の裏長屋では、井戸やトイレなどが共同であり、共有することにより市民社会が形成されたという意味のことが記されていた。

現代にあてはめると、侍はサラリーマンに置き換えることができる。大名は大手企業であり、旗本・御家人は国家公務員のようなものだろうか。戦前は、農業に従事する人が50%あり、さらに残りの50%のうちの多くは商工自営であり、サラリーマンはごく少ないエリートであった。

しかし、戦後は一貫してサラリーマン=侍階級が増え続け、農業は5%を切り、商業なども個人経営から会社経営が主流となりつつある。その結果が、会社というムラ社会の影響力が大きくなり、共有することで培われた連帯感が元になる地域社会の崩壊が生じてきたのではないかと思う。

オリンピックやサッカーのワールドカップで国を思い出し、甲子園の高校野球で強度を思い出すのは、郷土の連帯感という残滓がまだ残っているのかもしれない。

地域社会を甦させるというのも、立派な戦後レジームからの脱却になると思う。安倍首相は憲法改正だけしか眼中にはないようだが。
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