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政府の月例経済判断で、「景気がこのところ弱含んでいる」という表現で、2002年2月に始まった景気回復が終焉したことを発表した。過去最長だったいざなぎ景気の56ヶ月を大きく超える、77ヶ月のロングランが終わったというのである。

景気に象徴的な名前が付くようになったのは、昭和30年代の高度経済成長の序章の時代に、歴史上かってない好景気をたとえて、神武天皇の時代以来最高ということで、「神武景気」という言葉が使われたのが最初ではないだろうか。それまでは、朝鮮戦争特需など直接的な名前だけであった。

昭和年にはじまった好景気は、「神武景気」をはるかに凌ぐものであったため、神武天皇の登場するはるか前まで遡る「いざなぎ景気」と命名されたのである。

今回の戦後最長の“好景気”には名前がない。いざなぎ景気のときは平均経済成長率が11.8%、バブル景気の時でさえ5.4%の実質経済成長率があったのに対して、今回は2.2%にすぎないのである。

名目成長率にいたっては0.8%の伸びでしかない。過去の好景気においては世界全体の経済成長率を大きく上回っており、相対的にも日本経済が強くなっているのが実感できたのだが、今回の“好景気”においては、世界全体の成長率は3%を超えており、相対的な日本の経済力は落ち込む一方だったのである。

2000年には世界で2番目に高かった国民1人あたりのGDPが、2006年には16番目まで大きく後退している。“好景気”が続いているのに、相対的な経済力がドンドン低下しているのは異常だといわざるを得ない。

そもそも景気のバロメーターの一つである、スーパーの売上高は10年連続して低下を続けている。世帯収入もしかりである。どこを見て“好景気”と判断していたのだろうか。恥ずかしくて景気に名前が付けられないのは当然だ。

確かにこの間企業業績は著しく伸びている。しかし雇用の削減という処置をともなうものであり、低金利政策による債務の減免など、消費者に犠牲を強いて企業業績を伸ばしたものであり、消費者にとっては先行きの不安感や政府に対する不信感を募らせただけではないだろうか。

企業は雇用だけでなく、設備、債務の三つの「過剰」を削減してきたため、「深くて長い谷は避けられる」というのがエコノミストの見方だそうである。

ハードルが低くなったために飛びやすいということなのだろうが、低くなりすぎたがために、一生懸命頑張って超えようとする「頑張る気力」が落ちてきたのが気がかりである。

仁徳天皇は「民の竈」から立ち上る煙を判断材料としたという故事があるが、国民目線を唱えるならば、景気判断は企業業績ではなく「民の竈」を基本にすべきであろう。
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