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金曜日に、有明のケーブルテレビショーのマーケティングセッションでコーディネーターを務めた。電気店の店主をゲストに迎え、成功の秘訣を探るというものであった。

小売業は大型店の進行により、家業としている専門店は衰退の一途を辿っている。電気店も高度成長期にはメーカーの系列店が全国津々浦々に展開し隆盛を誇っていたが、大型量販店の攻勢の前に、街の電気屋さんは次々に姿を消している。

そのような中で、東京の町田市の郊外で、大型店の攻撃にさらされながら、粗利率37.8%という極めて高い利益=顧客の支持を受けている電気店がある。それがゲストで出演された「でんかの山口」である。

このお店は松下の系列店(懐かしい言葉である)であるが、従業員が40名を超えており、街の電気店としては極めて大きな店であるのだが(全国でもトップ10には入るだろう)、コジマやヤマダ、ヨドバシなどとは比較にならない小さな規模である。

10数年前に量販店の進出が相次ぎ、商圏内に大型店が6店も出店し、ピンチに立たされた。そのときにオーナーの山口さん(名前はつとむさんである)が戦略の大転換をし、高粗利の店を志向し、当時の粗利率25%を35%にまで引き上げる目標を定め、現在はその目標も突破し40%の粗利が目前にまでなっているのである。

同じようなサービスをしていたのでは高い粗利を稼げるわけがなく、そのために顧客を営業マンが月に1回御用聞きに訪問し、調子伺いや照明器具の取替えを行うのはもちろんのこと、家具の移動など「痒いところはどこでも掻く」という姿勢で顧客の信頼を勝ち得、粗利率35%に見合うサービスの提供を心がけたのである。

このようなきめ細かなサービスを実現するためには、顧客の絞込みが必要であり、それまで37千件あった顧客を14千件まで絞込み、優良顧客に対する手厚いサービスを展開している。通常なら顧客をいかに増やすかに力を注ぐのだが、全く逆である。

その成果は、1年以内の購入率40%という数値に表されている。家電などの耐久消費財は購入サイクルが長く、系列店の平均では20%程度とされており、顧客にがっちり食い込んでいることがよくわかる指標である。

セミナーが始まる前の雑談の中で、北京オリンピックの商戦についての話題になったのだが「ほとんどの顧客の所にテレビを売ってしまっており、ほとんど影響がない」との事だった。ハイビジョンテレビの累積販売台数が1万台を突破しており、系列店では圧倒的な販売実績なのだが、優良顧客を囲い込んだ成果と見ることができる。

顧客に店を選ぶ権利があるのと同時に、店も顧客を選ぶ権利がある。ニーズの異なる顧客にあまねくサービスを手がけるのではなく、店の方針・理念に賛同する顧客を集めるというのが、高いCSを獲得できる一つの手段ではないだろうか。

山口社長は、「世の中で“安売り”という言葉は当たり前のように聞くが、“高売り”という言葉は聞かない。値段の高い店を目指したい」ということを言われていた。一つの方向だと思う。
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